働かないアリなどいないのでは?
新聞を読んでいて、アリの研究の話が目に止まりました。
アリの集団の中には一定数の働かないアリが存在するが、それは決して無駄ではないと言う内容です。
アリの集団の中に2割程度のアリに働いている素振りが見られない、いわゆる「働かないアリ」だといい、働きアリが全て働く集団と、働かないアリが存在する集団をコンピューターを使ってシミュレーションしたところ、働かないアリが存在する集団の方が長く存続する結果になったといいます。
一斉に働き続けると、効率的ではありますが、やがて組織は疲弊してしまい、一定数の待機要員、余裕が必要であり、目先の効率だけを追い求めては、集団は長くは続かないと研究の中で指摘されています。
この研究の成果を踏まえ、人の組織、会社にも擬えて話題になり、過去にも広く紹介されています。
しかし、自然界の働かないアリは本当は働かないアリでは無いのでは、そんなに甘い世界ではないのではないかと以前より感じていました。
もちろん、研究論文を読んだわけでもないので、引用された記事を読んでの疑問です。
アリの集団において、365日休みなしで、稼働時間8時間の労働形態のみだとすれば、勤務シフトを組むと、週休二日を働きアリに確保させるるためには日々2割程度の休暇組がいてもおかしくありません。
なので研究の中で観察された「働かないアリ」とは、勤務シフト上での非番なのであり、本当の意味での余裕としての存在とは違うのではないかと考えられます。
例えば、怪我や病気等で働けなくなったアリはカウントできていないのではないでしょうか。
アリじゃなかったかもしれませんが、働けなくなった個体はコロニーを追い出されるともききます。
例えはよくありませんが、会社など組織には一定数、病気等で休暇を取られている人、長期休職されている人もいますし、中途での退職を選択される人もいます。
そのような時に、欠員が補充されずに、休日返上、超過勤務で対応せざるを得ない場合も少なくありません。
さらに、残される同僚に申し訳ないと言って、不幸にも体調を悪化させる人もおり、悲劇と言えます。
経営上の問題で補充したくてもできなかったり、募集しても定数が確保できないなど様々な問題もあります。
なので、人間もアリに習い組織に余裕を持たせましょう、といった単純な議論ではないと思います。
現在、私は会社で業務のパフォーマンスをデータ分析により評価し、組織の再編により効率化に取り組むことがミッションとなっています。
効率重視で組織を疲弊させるのではなく、余裕シロを如何に稼ぎ出し、品質と安全につなげること、この品質と安全管理は休職者が出ても対応可能な仕組みとして残せるかが、真の効率化に繋がるんだと、アリの記事を読みながら改めて考えさせられました。
一方、経営者の中には、無駄なものは全て削ぎ落とせと、現場の苦労を見ようとしない人もいます。
そういう経営者に限り、疲弊した組織を逃げ出そうとする社員を、甘えていると断じてしまい、自らが疲弊させているという現実を見てくれません。
もう少し社員も生身の人間だということを再認識しないといけないですね。
経営とはそんな甘さでは務まらないと、一蹴されそうですが、株主よりも社員の幸せを見て欲しいと感じます。
相反することで、非常に難しいですが、データ分析による組織の効率化の取り組みでは、品質と安全のための余裕の確保に加え、社員の幸福感にもつなげたいと思います。