鶏肉好きですか、嫌いですか?
実は私は鶏肉嫌いなんです。
妻も鶏肉が苦手なようで、結婚してからも、私の好き嫌いについて文句を言われることもなく、これまであまり意識せず生活していましたが、ある日、その事を思い出す出来事がありました。
数年前になりますが、脳血管系の病気で入院した経験があるのですが、ICUから一般病室に移される際に、食事の希望を聞かれました。
私は迷わず、「鶏肉が嫌いです。」と答えました。
翌日より、私の病室に運ばれる食事には、「鶏肉嫌い」表示が施された、わがまま仕様となり、毎食ご飯を食べながら、「ああ自分は鶏肉が嫌いなんだ」と意識させられました。
鶏肉嫌いな人には、様々な理由があるかと思いますが、私の場合は小学生の時のある恐ろしい体験が引き金となっています。
小学校から帰宅した私は、台所で料理中の母に、元気よく「ただいま」と声をかけました。
母はいつもと変わらぬ優しい笑顔で応えてくれましたが、手もとのまな板を見ると、毛をむしられ、首と足の先が切り落とされた、鶏丸一羽の白い肉塊が見えました。
しかも、丁寧に内臓が並べられているではないですか!
あたかも検死官が司法解剖しているかのごとく。
母はリケジョで、探求心が強い人でした。
当時の母は肥料系の工場で化学分析業務のアルバイトをしながら料理教室の先生をしていました。
鶏丸一羽のローストチキンを教室で教えるための練習を家でしていたのです。
そして、鶏の内臓で解剖学の勉強でもしていたのでしょうか。
内臓が抜き取られたお腹に、野菜や香草を詰め込む母の姿は、正に悪魔の所業、魔女の儀式です。
それを見た日から私は、大学生になるまで鶏肉を全く食べることが出来なくなったのです。
そんな私も大学時代、部活で合宿所生活をするようになり、過酷な練習に明け暮れる中、生命を維持するためのカロリー摂取が必要で、やむを得ず、皮の無い状態の鶏肉であれば、何とか鼻をつまんで、目をつむって食べることが出来るようになりました。
(私の大学生時代の部活の話です。)
当時、私の母は、食事係の女子マネージャーに感謝していたようですが、私はまだまだ鶏を好きにはなれませんでした。
余談ですが、納豆も合宿時代に食べられるようになりました。
そんな私も社会人になり、飲み会のお付き合いの中、唐揚げと焼き鳥は、苦手ではなくなり、普通に食べるようになりました。
でも皮のぶつぶつ、骨があったり、手羽先のような生前の姿を感じさせるものは、今も食べることは出来ません。
なので、出来るだけ鶏肉を避けるようにしています。