2位じゃダメなんですか?
度々、スーパーコンピューターが話題になったり、当時の政権を揶揄するときに出てくるフレーズです。
計算速度の世界1位を目指す、スーパーコンピューター「京」の開発費が当時の政権与党の事業仕分けにかけられた際に発せられた質問でした。
この質問に文科省の官僚や開発者は上手く反論出来ませんでした。
そして十分に議論されること無く、ほぼ凍結するとの結論になりました。
当時、事業仕分けは政治ショーそのものの感があり、科学の専門家でもない政治家に何が分かるんだと、ノーベル賞受賞者をはじめ科学界が猛反発し、その後、凍結は解除されました。
その後、開発計画は継続され、京は世界1位を記録しました。
その後、「富岳」の開発に引き継がれ、コロナの飛沫拡散のシミュレーションや最近、豪雨災害を引き起こすことで注目される線状降水帯の発生予測など、我々の生活にも大いに関わる研究に貢献しています。
こうした貢献のアピールは、あの事業仕分けの議論も踏まえて、ことさらにアピールしたいとの意図も感じますが、とても重要なことと思います。
ただ、報道されることは研究用途の極一部だと思うのですが、ことさらのアピールのせいで、その程度の研究しかやってないの?と思ってしまいます。
コロナ飛沫等の研究以外にも、生命科学や物質科学、量子力学など様々な分野の研究に活用され、科学技術の進歩に貢献するスパコン、本当に貢献することを期待していたのなら、なぜ事業仕分けの際には、上手く説明出来なかったのでしょう。
2位じゃだめなんですか?
- 世界一の研究には世界一の装置が必要です
- 国民に夢を与えます
答えているようで、まったく本質的な答えになっていませんよね。
報道では、こんなうわべの会話だけが切り抜かれていますが、本当はもっと深い議論がされていたと信じたいです。
うわべの発言だけではなく、マスコミは国民に取って何が必要なのか、税金がどのように研究に活かされているのか、もっと突っ込んで、活発な議論を求めて欲しかったです。
役人や開発者も、大事な税金を使うのですから、1位が目的なのではなく、科学の発展、もって我々国民の生活さらには人類全体へ貢献すること、そのために必要な性能の一つのKPIとして、世界1位の速度が必要であると、なぜ合理的な説明が出来なかったのでしょうか。
この開発の数値目標が、開発者のプライドが、本来の目的である科学の発展や国民生活への貢献にとって変わってしまったかのように、世界一と説明してしまった、あるいは言葉じりを取って政治利用されたんでしょうか。
当時の関係者は、政治ショーに翻弄され、予算カットを恐れ、1位になることが目的ではないと、言えなかったとのこと。
後の「富岳」の開発を担当された、東工大の教授も、速度の1位が目的では無いと言わなければならなかったと、当時を振り返りお話されていました。
あくまでも多様な研究に貢献することが目的であると。
こんな大それた研究予算の話ではありませんが、わが社においても新たな設備やシステムを導入する予算要求の際にも、ちぐはぐな議論が行われています。
その結果、役員会までたどり着かず、廃案となるような要求項目もあります。
技術者の説明能力が問われる場面ですが、口下手、説明下手なんですよね。
あいつ等(経理の担当者)、このシステム導入の重要性、緊急性がなぜ分からないんだ、的な愚痴が飲み屋で聞かれます。
でもこれって、事業仕分けの時の役人や研究者と同じく、本質的な質問に対して、専門家でない経理担当者にも十分に分かるような答えを準備出来なかった、事業部門に責任があるんですよね。
そして役員会にたどり着いた後も、他社との差別化、利益、品質向上、コスト削減など、納得してもらえる理由を的確に経営陣に示す必要があります。
そして、我々の新規事業が、会社の事業戦略とどのような関係にあり、会社経営への貢献はもちろん、他の部門への波及効果を丁寧に説明しないと役員にも聞いてももらえません。
事業仕分けの際には、ノーベル賞受賞者の野依良治さんが政治家達に「歴史という法廷に立つ覚悟はあるのか」と重みのある言葉を突きつけ、再考を迫ったとか。
まさかそんな事、役員会で経営陣に言えるわけないですし、言ったら即刻、「出ていけ!」って怒鳴られちゃいますよね。
買い物でビールを買ったら、妻に「発泡酒じゃだめなんですか?」って聞かれそうです。
- 明日会社で頑張るためには、美味しいビールが必要なんです。
- ビールは自分に夢を与えます。
もっと説得力のある答えを教えてください。