下克上
私がベトナムホーチミンでプロジェクトを担当していたとき、現地のビジネスパートナーの自宅に招かれたことが度々ありました。
いろいろ現地料理をご馳走になったのですが、ヤギと鶏には苦戦しました。
特に苦手な鶏肉が振る舞われた時、口に運ばないと、ビジネスパートナー(タンさん)とその奥さんに失礼なので、顔色一つ変えず頑張って食べようとするのですが、生前の姿が想像出来る料理は体が拒否反応を示します。
部下と一緒に招かれたときは、出来るだけ部下に食べさせて、かわすようにしました。
ある時、鶏肉入りのサラダが前菜として出た時、私は卒倒しそうになりました。
明らかに、トサカつきの鶏の顔肉です。
手を付けずにいると「このトサカは絶品だ」的な事を言って勧めてきます。
私が鶏肉が苦手な事を知っている部下は気をつかってくれて、それを全部食べてくれました。
ほっとしていると、部下がトイレに行った際に、タンさんが真面目な顔で話しかけてきました。
「あいつには気をつけろ」と。
「あいつは相当な出世欲があるぞ、寝首を掻かれるぞ」と言っていると通訳さんが教えてくれました。
後から通訳さんに聞いたところ、ベトナムでは、上司に出されたトサカを食べるのはご法度で、その地位を狙っていると思われても仕方がないとのこと。
つまり、部下が下剋上を狙っていると忠告してくれているのです。
後日、その話を聞いた部下は「勘弁してくださいよ。課長のために我慢して食べたのに。でも出世はしたいですね。(キラッと光る目)」
(鶏肉が苦手な理由を紹介しています。)
(ベトナムでの仕事の話)