鈍感力が成功に導く
私はある意味で楽天的な性格だと言われることがありますが、実は鈍感なだけなのです。
でも鈍感力が高い方が仕事がうまくいくこともあるよなって、お昼にフォーを食べながらふとそんなことを思いだしました。
私は10年以上前に、英語もろくにしゃべれないのに海外での新規事業開拓を担当させられたことがありました。
当時、わが社はホーチミン市に進出することを模索し始めていました。
そのプロジェクトマネージャーを私が任されたのでした。
初めて現地に旅立つ前日、役員から言われた言葉が「君はホーチミンでの我が社の橋頭保になれ」でした。
その時は、何を言われているのか、あまり何も考えずに「承知ました。現地での関係構築に向け取り組んでまいります。」ぐらいの返事をして旅立ったわけです。
タンソンニャット空港に到着し、ホーチミン市街への移動のタクシーでぼったくられ、さらに約束していた現地コンサルタントにはすっぽかされ、初日の予定は台無し。
初日から随分と疲れ、その時、初めて「橋頭保」という単語の意味をかみしめました。
君(私)=橋頭保と言われた意味を。
橋頭保とは、敵の勢力下で十分に兵站が得られない要衝に築く前線拠点のことです。
つまり、会社からの援助は十分ないけど、まぁ営業の要衝となるホーチミン市で、しっかりやってこい。
成果を上げなければ帰ってくるな、ぐらいの勢いだったのかも知れません。
そう思うと、すごくやるせないというか、怒りを感じるようになりました。
ああ、なんて自分は鈍感なんだと。
結構ひどい扱いを受けているんじゃないのか、なぜ気づかないんだと。
そして、現地のビジネスパートナーに対しても国民性の違いからイライラが連発しました。
でも不思議なことに、そんなホーチミンの人たちも夜の宴席やカラオケでは良い友人になってくれました。
最初は接待していたんですが、そのうち自宅に呼んでくれて家族を紹介してくれたり、割り勘で飲む時もありました。
そして、滞在期間中に、私の持ち前の鈍感力が功を奏して、ベトナム人たちと毎夜、モッハイバーヨーって乾杯しながら、バーバーバービールを飲みまくっている間に、すっかりビジネスでもよい関係を築くことができました。
このまま橋頭保としてここで埋もれてもいいや、ぐらいの気持ちになっていました。
滞在期間中、二日酔いの朝には、ホテルのバイキングではフォーが定番メニューとなっていました。
そんなことをお昼ご飯食べながら思い出していました。