毎日いろいろ考える

普通のおじさんが毎日考えたことを書きます。

モノより経験

心理学者であるコロラド大学のリーフ・ヴァン・ボーウェン(Leaf Van Boven)、コーネル大学のトーマス・ギロヴィッチ(Thomas Gilovich)の共同の研究により、「物質的な所有(モノ)よりも経験の方がより人々に幸福感を与える」ということが科学的に証明されていると言うのです。

https://www.researchgate.net/publication/5634549_To_Do_or_to_Have_That_Is_the_Question

 

彼らの研究では時間の経過に焦点を当て、モノによる幸福感は時間とともに薄れていくが、経験的な幸福感は、継続することを科学的に証明し、「モノよりも経験が人々に幸福感を与える」と説明しています。

これは私たちの普段の経験の中でも、日々実感しているのではないでしょうか。

 

例えば、新しい流行りの服を買っても、翌年には古臭く感じて着なくなったり、パソコンを購入しても、直ぐによりスペックの高い新製品が発売され、満足度が薄れていきます。

人は幸福感に直ぐに慣れるため、モノを手に入れても「次はもっと良いモノを」と欲望が増し、さらに他人のモノと比較することで、幸福感が薄れてしまうのかもしれません。

 

一方、体験に対する人の幸福感は時間を経ても継続します。

例えば、海外旅行などで得た経験って、いつまでも楽しかった思い出として残っていますよね。

私も30年前に中南米へ旅行した経験がありますが、今も良い思い出として忘れられません。

貧乏旅行であり、それこそ旅行中は体調を崩したり、身に危険とまでは言いませんが、高速バスの予約ミスやレストランで上手く注文できなかったりと、嫌な経験もしました。

そして、その瞬間は二度と来ないぞって感覚でした。

でも、いつのまにか脳内で嫌な経験も良い経験に変換されており、全てが良き思い出となっています。

人間の脳は、ネガティブな記憶を省き、精神を楽な状態に保とうとする保護機能があると言われていますので、そうした効果でしょうか。

 

そういう意味で、この研究結果に概ね賛成ではありますが、初めて買った車に関しては、少し違うような気がしました。

 

私は、就職して2年目の終わりに、スズキのエスクードを買いました。

当時は4駆ブームで、私は男くさい武骨な三菱のパジェロを買おうか、女子ウケしそうなハイラックスサーフを買おうか、相当悩んだ挙句、金銭的、サイズ的に身の丈にあったエスクード(愛称、エスくん)を購入しました。

購入の経過は妥協の産物であり、さらに他人の所有物と比較しやすいモノであります。

しかし、私は一度たりとも、エスくんを買ったことを後悔したり、他人の車を羨ましいと思うこともありませんでした、いや、むしろ誇らしく感じていました。

大阪南港からフェリーに乗って高知県に渡り、四万十川沿いを走ったり、福井県の林道を走破したりしました。ロッククライミング、キャンプやダイビング等、特にアウトドアで大活躍してくれました。

 

子供が生まれ、ベビーシートを固定すると、妻が後席で子供の様子を見れなくなるため、二人目が生まれる前に泣く泣くミニバンに買い替えたのですが、車を二台所有できなかった自分を恨めしく思いました。

 

この写真を撮った後お別れしました

ここまで書いて気が付きました。

エスくんは、私にとって単なる所有物(モノ)ではなく、経験であり友人だったんだと。

モノを買いながら、実は素晴らしい出会いという経験を買っていたんだと。

だから陳腐化せず、いつまでも良い思い出として、とどまっているんですね。